帰還兵くんが突然会いたいと言ってきた。
井苅は倅を連れて帰還兵くんと池袋で待ち合わせ。
「きかんへいせんせいこんにちわ」
「倅くんこんにちは。ああ、井苅さんお休みのところ呼び出してすみませんね」
「いったいなんだよ神妙な顔して。なんかあったのか?」
「まあ、とりあえずゆっくり話せる所に移動しましょう」
なぜかトヨタアムラックスへ移動する一行。
「なんすかこれ中古っすよ。こんなの買う奴いるんすかね」
「いや、好きな奴は欲しがるだろ」
「以前ヲタはナギ様の中古問題で切れてたっすからね、こんな使い古し買うヲタはいないと思いますよ。『ヲタをなめるな』とボクは主張したい」
「まあ価値観は人それぞれだからな。しかしこのカーナビ、ミポリンの声でナビしてくれるのか…」
「ガルパン使用だったらやっぱり人気の秋山殿の方が良かったんじゃないっすかねえ」
「いや、車長はミホだからべつにこれでそれほど間違いではないとは思うが…」
「うあ!あいついったい何やってんっすかね?」
「天井にも各チームごとの絵が描いてあってだな…」
「いやあ、さっきから30分もあいつ隅々まで写真撮ってておかしいなとは思ってたんすよ。勝手に椅子を使っちまってやべえぞあいつ、うっひょっひょひょひょ…」
「ちゃんと靴を脱いで立ってんだから別に構わんだろうが」
「で、そんなことより何の用事だよ」
「いやあ、今度ちょっとしばらく出国しますんで…」
「もしかして“任務”とかってやつか?」
「まあ、詳しいことは言えないんですが、もしかしたら井苅さんに会うのもこれが最後になるかも知れないんで…」
「おい、いったいどこ行くんだよ!?」
「ほんとに詳しく言えないんすけど、朝鮮半島行ってロシア行ってイスラエル行ってトルコ行って…まあ、今ちょっとにぎやかになってる所に野暮用で行ってくるんで…」
帰還兵くんは軍籍があって特殊任務についていると時々言っていたが、それがいったいどこの国なのかは今まで教えてくれたことが無かった。
半島情勢が急を告げ、中東諸国も穏やかではない昨今だが、多くを語らないものの何らかの指令が彼に下ったのだろう。
それは死の覚悟さえ必要な任務だったのだろう。
だからこの国で親しくしている井苅に、もしもの時のためを思って挨拶をしにきたのだろう。
「もし無事に戻ったら倅くんを連れて大洗に聖地巡礼に行こうと思ってるっす」
「それフラグじゃね?」
『シャア専用オーリス』
『ラブライブ!仕様痛車』
「しかしなんでアムラックスは痛車だらけになっちまったんだ?以前はこんなじゃなかったはずだぞ」
「それはペレストロイカ斎藤の陰謀です」
「は?誰?」
「ペレストロイカ斎藤と言う工作員がかつてこのアムラックスに潜入していまして、様々な工作を行っていたことが我々の調査で判明しています」
「いったいどこの国の人間なんだ?」
「……」
「禁則事項と言うわけか…」
(25.4.23)