井苅和斗志…元自衛官の予備3等陸曹。36歳
伜(せがれ)…井苅の息子。4歳にして2か国語を操る
「そうだ、靖国に行こう」
今年はまだ靖国詣でをしていない、思い立ったが吉日、井苅はさっそく出かける準備。
しかしまだ出かけるわけにはいかない。
今日の午前中指定で宅急便が届く予定なのである。
最近『Aチャンネル』にハマっている井苅はamazonでついついブルーレイを注文してしまったのだ。
「しかしあの店員、なんで必死に笑いを堪えてたんだろうな」
先日某家電量販店の書籍コーナーに伜を連れて訪れた時のことだ。
ピクサーアニメ『カーズ』の絵本を伜にねだられ、ついでに『Aチャンネル』の単行本3冊を伜に持たせて井苅はレジに向かった。
レジは20歳前後の若い女性店員。伜は背伸びをして女性店員に『カーズ』と『Aチャンネル』を手渡す。
手渡された書籍を一瞥した女性店員は目を見開いた。
「お、おあ…、お預かりします。ポ、ポイントカードは…ご、ございます、か…」
口角がぴくぴくと痙攣している。いったい何事なのだろうか。
急に伏し目になりこちらをまともに見ようとしない。
書籍を袋に入れながらも女性店員は口角を上げ下げし、傍目にも笑いを堪えてるとしか思えない。
「あり、ありがとうご…ございました…ぷ」
何と言う失礼極まりない態度。もうこの店では買ってやらんぞ。
女性店員の意味不明な行為に井苅は気分を害しブルーレイ購入は通販にした。
「だいたい笑われる理由がわからんよ。親子で顔が似てるからってそんなにおかしいか?」
おそらく理由はもっと他のことであると思うのだが井苅は気づいて無いようである。
井苅がぶつぶつとひとり言をつぶやいていると玄関のチャイムが鳴る。
「井苅さ〜ん、宅急便で〜す」
「爸爸、宅急便来た!」
amazonの箱を受け取り中を確認。観たい観たいとせがむ伜を制してともかく玄関を出る。
このところ猛烈な暑さが続いているが、この日も変わらずの猛暑である。
「ああ、これは暑すぎるぞ」
普段一日のほとんどの時間を屋外で過ごしている井苅であるが、それは給料が発生しているから耐えられるのである。
この炎天下に外をうろつくのは辛すぎる。
「とりあえず昼飯でも食うか。なにがいい?」
「納豆巻き!!」
デパ地下で寿司を買って屋上へ。
伜は大好物の納豆巻をひとりでぺろりと平らげ満足そうである。
井苅は貝づくしの寿司を食べながら缶ビール500mlをごくごくと飲み干した。
ほろ酔い気分で地下鉄に乗っていざ靖国へ。
地上に出ると蝉がみんみんと鳴いている。
暑さのせいか境内に人はまばらである。日陰を選んで参道を進む。
手水がとても気持ち良い。心身が僅かではあるが涼しくなったようにも思える。
拝殿前に立つと井苅は二礼二拍手一礼。見様見真似で伜も井苅に続く。
井苅は年に一度は靖国詣でを欠かさぬように心がけているが、伜を連れて靖国を訪れるのは初めての事であった。
十数年後にはどんな形かはまだ判らないが、恐らく自衛隊に関わりをもつことであろうこの伜。
「英霊はいったい俺ら親子をどんな目で見てるんだろうな…」
しかし井苅一家の家族構成を考えればそれは大日本帝國後期の状況に似ているのであった。
多民族多種族が祀られている靖国神社である。
たぶん英霊は前世紀終盤から発言力を増してきたニワカ愛国者たちよりも俺らを受け入れてくれることだろう…と自称右翼の井苅はひそかに思うのだった。
何やら小洒落た喫煙所
(24.7.31)
西雑司が谷遠足同好会日誌
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