「この写真はどこですか?中国っぽいですけど…」
「ああ、それは去年(平成22年)の9月に中共の上海に旅行へ行ってきた時のものだよ」
「なんか警察車輌ばかり撮影してますね。パトカーですよね」
「おう、白バイもあるぞ」
「ちょうど上海万博が開催中だった影響もあるんだろうな。街中警察官が大勢いたよ」
「中国って交通マナーなんて無いに等しいですよね。ルールなんてほぼ守られてないし…」
「確かに凄かった。特に自転車歩行者だが、いったいどっちの信号が青だかわからんほどだった」
「俺も中国行った時、危うく轢き殺されるところでしたよ。とりあえず信号は参考程度にしか認識されてないですね」
「しかしだな、警察もかなり頑張って取締をやっていたぞ。主要な交差点には警官が立って交通整理してたし、
信号守らないと笛吹いてたり説教したり…」
「交通ルールの啓蒙活動も兼ねてるんでしょうね」
「これは電気自動車みたいですね」
「そう、わりと人の集まる歩行者天国っぽい場所を巡回してたよ」
「どこ製ですか?」
「いやあ、よくわからんよ。ただでさえ写真撮るのもこっそりと“風景撮ってる時に偶然写り込んでしまった”然を装ってたんだからさ、そんなに近づいてじろじろと観察するわけにもいかん」
「うーん、日本でもパトカーや白バイを堂々と撮影してたら職質受けそうですもんね。
中国だったらどんな騒ぎになるんだか。かなりリスキーなことしてますね」
「そう、だからさ、結構ドキドキしながら撮ってたんだよね。幸いこちらはSONYのNEX-5使いだから、その小型のボディを活かしてさり気なくあまり目立たず隠し撮りしてたつもりなんだけど…」
「パトカーはフォルクスワーゲンとフォードが多いみたいですね」
「このSUVは日産車だぞ」
「中国車はなかったんですか?」
「見た範囲では見当たらなかったな。」
「白バイは見た範囲ではホンダ、カワサキ、スズキの日本製3社で占められてた。250ccばっかりだった」
「日本の白バイは750ccが主流ですが、中国の白バイは250ccが主流なんですね」
「まあ、どう考えてもあの交通事情では自動車専用道以外でスピードが出せる道は無いからな。これで用は足りるんだろな」
「しかし、年季の入ったバイクばっかりですね」
「あ、でもこの最初にみせたカワサキのはわりと新しいぞ」
「でもなんか乗ってる人が白バイ警官って感じじゃないですね。普通のおまわりさんがヘルメット被ってバイクに乗ってる雰囲気だし」
「ああ、ある友人に言わせれば『これは日本で言えば昭和30年代を彷彿させる雰囲気』とのことだ」
「これは取締ですか?それとも事故とか故障車ですか?」
「いや、離れた場所からだからよくわからんよ。しかし、中共の警察の名誉の為に言っておくが、彼らは決していい加減な仕事はしてないぞ。ほんとに忙しそうに駆けまわってることは確かだ」
「恐らく人手が足りない状況だと…」
「まさにその通り。いったいあのカオスな状況をこの人数でどうやって秩序を取り戻すのかと。
交通違反を極刑に処すくらいじゃないと短期間で交通法規を遵守させることは困難だろ」
「そんなことしたら“革命”が起こっちゃいます」
「まあ、だから徐々に教導してゆくしかないんだろうな。日本だってそうだったわけだし。しかし向こうは規模が規模だからな。気の長いことになりそうだ」
「この建物は何ですか?なにやらパトカーが駐まってますけど」
「外灘で泊まったホテルの目の前の建物が警察署っぽかったんだけど、勇気がなくて確かめに行けなかった…」
「上海租界か。『閃光のナイトレイド』の舞台ですね」
「…?」
「あ、失礼、観てませんでしたか…。
しかしまあ、これだけ警察車輌が駐まってるところをみるとその手の施設なんでしょうね」
「あと、人通りの多い歩道で電動スクーターに乗った警官が現れたが、突然の事だったんで撮れなかったのが残念」
「日本で言えば交番の自転車の感覚でしょうか?」
「まあ、そんな感じの雰囲気だったね」
「ところで、上海万博へは行ったんですか?」
「いや、行ってない」
「はあ?なんでですか?せっかく上海に行ったのに?」
「いや、かみさんがさ、ホテルで蘇州杭州のバスツアーに申し込んじゃってさ、それで万博行く時間が無くなっちゃった…」
「それって現地のバスツアーですか?」
「そう、だからまわりは全員中国人旅行者。かみさんがなんか変な気を使ってさ、わたしは“華僑で中国語が不自由な中国人”って設定にいつの間にかなってたよ」
「なんすかそれ」
「いやあ、見た目で外人ってわからないじゃん。『こいつはなんで言葉が喋れないんだ』って現地人の反応が何度があったらしいから、焦ったかみさんなりの苦肉の策らしいんだが…」
「で、この人がその時のバスガイドさん。かわいいだろ」
「……」
「…え?」
「い、いやあ、好みは人それぞれですから…」
「たぶんもう二度と逢えないんだろうなあと思うとちょっと残念な気がしてな。言葉もわからんし、かみさんの監視もあるんでこっちも変な行動できなくてさ、ガイドさんと一緒に写真が撮れなかったのが心残りで…」
「まさに一期一会ですね」