モード学園コクーンタワー潜入ミッション

  • 2011.05.26 Thursday
  • 00:00
      

昼下がりのとある喫茶店。
西雑司が谷遠足同好会の会員である白虎野さん、帰還兵くん、そして会長の3人が談笑してた。
「超高層ビルと言えばあれだ、新宿モード学園のコクーンタワー、あれなんか奇抜なデザインだよね」
「とても目立ちますよね」
「でもあれって校舎だから学生しか入れないんだよね。すごく中に興味あるんだけど残念だよなあ」

「入れますよ」
今まで話に興味なさそうにきょろきょろと周囲を見回していた帰還兵くんが突然口を開いた。
「え…!?」
「だから、学生でなくても入れるんです。『入学相談会・校舎見学』ってのが毎日行われているんです。
このホームページを見て下さい」
確かにそこには申し込みのフォーマットがあった。
さすが帰還兵くん。警察の職質を軍の身分証でかわす男。
諜報活動が得意だと自称するのもだてじゃない。
かたかたと申し込み書を記入する白虎野さんを尻目に帰還兵くんは続ける。
「あ、でも申し訳ないんすけど、俺その日は“任務”があるんで欠席しますよ。
お二人で楽しんできてください。ふひひひひ…」
いったい何の任務なんだろう。
いつものことながら帰還兵くんは“任務”について具体的なことを何も教えてはくれなかった。
  
  

「さあ、われわれもミッションスタートだ!」
コクーンタワーの地下出入口にたどり着いたエージェント2名。
「ラジャー!!」
意気揚々とエントランスに続くエスカレーターを登って行く。
受付を済ませると白いドット柄のガラスの部屋でしばし待機で担当者を待つ。
申し込み書では2号が入学相談者で1号がその付き添いという設定になっている。
最終確認をしながらもエージェント1号の中にはそこはかとない不安感が浮かんだ。
『いや、集団での説明会を想定してたんだが、これはまさか三者面談状態なのか?』
不安的中。おしゃれワイシャツを着たスーツ姿の浅黒い肌の男性が登場。
「はじめまして、入学相談室の××です。モード学園にようこそ!」
エージェント2号の表情に緊張の色が若干見える。

自己紹介もそこそこに、おしゃれ先生は2号に矢継ぎ早に質問攻撃を加える。
「白虎野さんはいまは何してる人なのかな?」
「社会人です」
「いろんな学科があるけど何を希望しているのかな?」
「グラフィック学科です」
「モード学園をどこで知ったのかな?」
「テレビCMです、♪どこま〜でも、どこまあ〜でも、はてし〜なあい〜そ〜ら〜♪」
「……」「……」
「それはモード学園のCMじゃないよ」

         DSC05312.JPG

「やっぱりこのモード学園の一番の売りと言うのは、就職希望者の就職率が100%ってことにあるんですよ。なんとかして学生の希望する業種や会社に就職できるように、モード学園は全力で後押しするんです」
おしゃれ先生は熱弁を振るう。なるほど、この就職関連の力の入れようは噂どおりだ。
「在学中から“産学連携プロジェクト”で学生にも実際に商品をデザインしてもらったりしてね」
さて、この面談はいったいいつまで続くのだ?
正直1号は少々飽きてきた。早く校舎見学がしたいのだ。
「そう言えばつい最近ですけど、あのミシュランの格付けでこのコクーンタワーが二つ星をもらったんだけど白虎野さんはご存知かな?」
「ミシュランって?あのミシュランですか?」
「そう、料理ガイドとかミシュランマンなんかのあのミシュランだよ」
しかし2号、よく話を合わせて会話を続けられるものだ。さすがこのミッションに志願しただけある。
さっきからおしゃれ先生の話を熱心にメモを取り続けている。
「では、他に質問がないようだったら校舎見学に出発するけどいいかな?」
待ってました!
エージェントたちは喜びを隠しつつ席を立つ。

      

まずは上層階へ向かう高速エレベーターに搭乗。
滑らかに上昇しほとんど揺れもない。これまたおしゃれな内装。おしゃれ先生も得意気な表情。
「グラフィック学科はこの階で勉強しているんだよ。素晴らしい環境でしょう」
確かに凄い。使う機材も最新式だが、窓の外の風景もとてつもない。
こんな風景を眺めながら勉強する専門学校も多くはあるまいと言う売りには頷ける。
内装もまた素敵だ。デザインが凝っていて隙がない。
隅から隅までよく考えられていて、これは手間ひまかけて大いにお金もかけてデザインされていることが見てとれる。
1号が気に入ったのは就職ガイダンスルームとその待合スペース。
青い部屋に緑の部屋、原色でべったりと彩られた大きなガラス窓の部屋にはそそられる。
待合スペースには半透明で色鮮やかなプラスティックの椅子がならんでとってもかわいい雰囲気。
1号は60〜70年代から見た未来の風景のデザインにそそられる。
それがこのタワーの内部に存在しているのだ。
ああ、何と言う素晴らしい空間なのだ。こんな素敵な校舎で学べるなんてなんて仕合せな学生たち。
2号も嬉々とした表情で校舎内をなめるように眺め回している。

「ところで…」
ついにきた!とエージェント1号は思う。
さっきからおしゃれ先生が疑問の表情を浮かべていることには気がついていた。
「ところで、お二人はどのような…」
「おにーちゃん、みてこれ素敵な椅子があるよー」
2号の呼びかける声。
「…兄妹なんですよ。母親に言われましてね、いつまでもフラフラしてないで手に職つけるために学校で勉強した方がいいって、それで今日は…」
「ははあ、するとお目付け役ですね」
おしゃれ先生が訳知り顔でにやりと笑う。
さすがエージェント1号2号。見事な連携プレーで危機を乗り切ったぞ。

             

「ご案内ありがとうございました。大変参考になりました」
「いえいえこちらこそありがとうございました。白虎野さんの今後の針路にモード学園がお力になれれば幸いです。何か質問があったらメールでも電話でもお気軽にしてくださいね」
分厚い学校案内を渡される2号。
こんな凝ったデザインの学校案内を1号はかつて見たことがない。
『どうやら我々がエージェントであったとは気付かれなかったようだ』
ほっとして二人はコクーンタワーをあとにする。

「しっかし凄い建物だったね。あそこまでデザインに凝ってると思わなかったよ」
「でも、建物は凄かったですけど、中の人たちはいまいちでしたね」
「確かに。モード学園の学生だからもっと挑戦的なファッションの人たちがいるかと思ったら…」
「…わりとおとなし目なファッションな人たちばかりで拍子抜けしました」
今回出会った学生たちと比べれば、白虎野さんのファッションの方が格段に個性的と言える。
「おしゃれ先生も言ってたけど、ここは就職のための技術を学ぶところで、アートがやりたいひとは芸大みたいなところへ行くべきだってね」
「職人を養成するところなんですね。ウチはアート志向だからちょっと違うかなって…」
「どっちが優れてるとか上だとかじゃなくて、要は表現の方法論の違いなんだよなあ」

「しかし残念だったのがあ…」白虎野さんが悔しそうに呟く。
「校舎内の写真を一枚しか撮れなかったことです。あの窓からの風景撮りたかったあ」
「ああ、確かにそうだ。わたしも中の様子撮りたかったんだが、三者面談の状態じゃシャッター押せなかった…」
「この失敗を教訓に、次の潜入ミッションでは何かいい方法を考えます」
さすがエージェント。研究熱心だ。
「案外学園祭なんかで入れるかも知れないな。またその時にでも…」
「ミッション・コンプリート!!」

         

(23.6.3記)
                      
コメント
コメントする








    
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM