陸上自衛隊広報センター“りっくんランド”遠足会〜その4〜

  • 2011.09.07 Wednesday
  • 00:00
                                             陸上自衛隊広報センター“りっくんランド”遠足会〜その1〜
                        (陸上自衛隊広報センター“りっくんランド”遠足会〜その2〜
                        (陸上自衛隊広報センター“りっくんランド”遠足会〜その3〜


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イベントホールには東日本大震災の被災地で活動する自衛隊の写真の展示がされていました。
「会長には出頭命令は来なかったんですか?」
予備自設立後初の災害出動命令が今震災ではかかったことは少し話題となりました。
「事前に地本から電話がかかってきたよ」
「電話ですか?」
「そう、希望調査ってか、アンケートって言うか…」
「え?なんすかそれ」
「いや、仕事持ってる人を強制的に招集したらその人の生活や職場を崩壊させるかも知れんだろ。だから行けるか行けないかまずは本人の都合や希望を調査してだな…」
「なんか軍隊として考えられないことっすよそれ。イラク戦争時の米軍なんて予備役に容赦無く招集かけてましたからね。NHKスペシャルなんかでも取り上げられてましたけど、失業したり路頭に迷ったり会社が潰れたりとか発生したって話っすよ。それに比べると日本は何と言う…」
「それで会長は何て返事したのですか?」
「命令があれば応じる。ただし、その時わたしは会社を馘首になるかも知れない。少人数の営業所の所属だからわたしが抜けたら業務が滞るかも知れないが命令を優先するって回答した」
「それって『行きません』って言ってるのと同義じゃないっすか!」
思わず苦笑する帰還兵くん。
「だってさ、震災後の週明けから一気に忙しくなったんだぞ。うちの会社も被災して混乱して人手が足りないってのに抜けられるわけないだろ」
「防衛省前で招集してくれって頑張ってた予備自の人もいたと言うのに嘆かわしい(笑)」
「そんなこと言うなよ。希望を訊かれたから答えたまでだ。訊かれずに命令きたら応じるよ。あとさ、兵士なんてのは無駄に意思を持たない方がいいんだよ。まして常備軍人じゃないんだし…」
「そんな回答してる人には怖くて招集かけられませんね」
「だからさあ、命令が来れば応じるんだって」

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「あ、ちょっとこれやってもいいっすか?」
帰還兵くんが駆け寄ったのは『射撃シミュレータ』と称する子供騙しのビデオゲームです。
「なんですかこれ?僕も挑戦してみます!」
白虎野さんも興味津々で、二人して戦車戦闘ゲームに熱中しています。
「ああ、全然敵に当たらない!どうすればいいのですか〜」
「簡単っすよ。すぐ慣れます」
異様な程に熱中している二人を残し、会長は館内をひとり散策。あちこちでシャッターを切っています。

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「まだやってたのか!」
しばらくして戻ってきた会長はいまだゲームを独占している二人にあきれ顔。
「見てくださいよ会長!スコア99999っすよ!もうこれ以上の点数は出ません」
「ああ〜悔しい!僕はようやく4桁スコアなのです〜」残念そうな白虎野さん。
ふと二人の手元を見るとレシートのような紙片が散乱しています。
どうやらゲームが終わるとそのスコアがプリントされる仕様のようなのです。
「おいおい、なんたる税金の無駄遣い。いったい何ゲームやってるんだよ。もう移動するぞ」
「あと1ゲームお願いします!」
「これで最後にしますからあ…」
来館者が少なく順番待ちもいないのでやりたい放題な二人でした。

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「さて、そろそろ売店に寄って帰るぞ」
会長はまだ遊び足りないと言った表情の二人を引っ張り売店でお買い物。
近年異様に増殖した自衛隊グッズの物色を終えると、三人は駐車場へと向かうために出入口付近の受付前を通過します。
受付担当の自衛官の皆さんに軽く会釈し喫煙所へ向かおうとした時でした。
「うわあ、きみ、それ痛くないのか!」
驚いて振り返るとワイシャツ姿の短髪でごっつい容姿の中年男性の姿が。
「おお!?それ突き抜けてるじゃないか!大丈夫なのか?」
よく見ると首からIDをぶら下げています。そこには『埼玉地方協力本部××2等陸曹』とあります。
ははあ、なるほど、館内を所在なさげにうろついていたワイシャツ男性たちは地本所属の隊員だったか。
どうやら広報センター内に埼玉地本の事務所があるようなのです。
「突き抜けてますよ」「痛くないですよ」
いちいち律儀に対応する白虎野さん。そんなの適当にあしらって放っておけばいいのにと会長は思うのだが、当の地本2曹はここぞとばかり質問攻め。
どうも思ったことは口に出さずにはいられない、思考と行動にタイムラグのない性格らしい。
「君等は学生か?社会人か?」
「同級生なのか?」(おいおい、ひと回りちかく年上がひとり紛れ込んでるぞ)
「自衛隊に入らんか?」「いえ、我々ふたりは予備自衛官ですが…」
「そうですか。それはご苦労さまです。どうもありがとう!…しかし君は凄いなあ。本当に痛くないのか?」
悪意が無いことはわかるのだがいい加減うっとうしいので喫煙所へと退避。
「いやあ、凄い人っすねえ。典型的な猪突猛進型下士官と言うか…」
「めちゃくちゃデリカシーの無い人ですね」
「こりゃあ部隊では疎ましがられてるだろうなあ。しかし表裏無く悪意も無いからなあ」
地方協力本部とは広報や募集などを行っている自衛隊の窓口です。
以前は自衛隊地方連絡部と呼ばれていて、その所属隊員は“地レンジャー”などと言われていたものです。
「あ、また来ましたよ」
見ると煙草を手に例の地レンジャー2曹が喫煙所へと近づいてきます。
「いやあ、これから何軒か家庭訪問だよ。この時間からじゃないと家に居ないからなあ」
「最近は大卒なのに自衛官候補生に…昔で言うところの一般2士だけど…志願する奴が多くて勿体ない。大卒が幹部候補生に志願せんでどうするんだ」
「昔は街頭でスカウトしたもんだが今はそんな時代じゃないからなあ」
「しかしきみ、本当にそれ痛くないのか?」
……
時計を見て煙草を消すと、「さあ、これからが勝負の時間だ」と地本カーに乗り込み地レンジャー2曹は去っていったのでした。
「案外ああ言った人が現場では活躍したりするんだよなあ」
疲れ果てた感のある会長が口を開く。
「災害派遣なんか出ると普段は問題児だったりいい加減だったりする人が異常な程に働くんだよ。逆に国の為だとか国民の為だとか言ってる思想から入ってる奴は口ばっかだってことが露呈したりしてさ…」
「まあ、そう言う評価もありますよね。しかし戦場ではどうだか…」
そのつぶやきはあまりに小声だったので会長の耳には届かなかったようだ。
意味深な笑みを浮かべる帰還兵くんだった。



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(23.9.15-10.31)            
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