井苅は月曜日の朝から飲んでいた。
休みにも関わらず早く目が覚めてしまったのでとりあえず缶ビールを一杯。
テレビで朝の情報番組を観ながらウイスキーを一杯。
嫁は出勤していったが倅が起きてこない。
とりあえず飲み続けていると「ぱーぱ、すいぞくかん、いきたい」と倅が起きてきた。
俺は宮城ふるさとプラザに牛タン定食を食いに行きたいんだ、そうだ、ついでに水族館も行こう。
日頃の激務で身体にガタがきているせいか、最近酔いがまわるのが早い。
酔った勢いでTwitterに妄言を立て続けに打ち込む。
『帰還兵くん、ヒマか?メシでも食いに行こう。ついでに水族館も』
『ちょうど空いてるからいいっすよ』
『じゃあ1200に宮城ふるさとプラザ前に』
と言いつつも倅の手を引いた井苅が集合場所に到着したのは13時を過ぎた頃だった。
「ちょっと井苅さん遅すぎっすよ」
「わるいわるい、ともかくメシだ」
昨年末からこれが食べたくて仕方が無かった井苅。
さっそく生ビールを注文し飲みながら牛タン定食を待つ。
「まだ飲むんすか?ウイスキーボトル半分でふらふらじゃないっすか」
「べ、べつに酔ってなんかいない。ちょっとアルコールが入っているだけだ」
あっという間に茶碗一杯を平らげおかわりする井苅。
「うむう、こんな時間だからか、今日は米がさほど美味くないなあ。巧く炊けてない」
倅はさほど腹が減っていなかったらしく、肉とテールスープだけ食べて茶碗にはほとんどてを付けてなかった。
「おなか、いっぱい」
「なんだ、もう要らんのか」
三杯目を平らげる井苅。
「よくそんなに食べられますね。ボクは最近少食でして…」
三人は食事が終わるとサンシャイン水族館へ。
季節柄合格祈願などと言うイベントが開催されている。
「ははあ、みんないろいろと願掛けしてるっすねえ」
「また水族館へ来れますように…って、そんなのまた来りゃあいいだろ」
「まあ、願いはひとそれぞれっすからね」
(25.1.30)